平簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金千円に処する
被告人に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する
右の罰金を完納することが出来ないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する
訴訟費用は被告人の負担とする
理由
(事実)
被告人は法定の除外事由がないのに拘らず昭和二十六年九月一日から同月四日迄の間前後四回に亘り肩書住居等に於て高野正三外二名に対しH・S式無熱高周波療法と称する療法を一回百円の料金を徴して施し以て医業類似行為を業としたものである。
(証拠)(省略)
弁護人はH・S式無熱高周波療法を業とすることは憲法第二十二条に保障されている自由な職業であり且この療法は全然無害で何等公共の福祉に反しない、従つて被告人の行為は処罰の対象とならない旨主張する、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法第十二条によれば同法第一条に掲げるものを除いては何人も医業類似行為を業とすることを禁じ同法第十四条第二項は同法第十二条の規定に違反した者に対する処罰を規定している、ただ同法第十九条所定の者については一定期間に限り一定の医業類似行為をすることができることを認めている、これ等の規定の趣旨とするところは医業類似行為が人体に及ぼす影響並びに効果に照して一定の学識経験を有する者に対してのみかかる行為を業とすることを認めそれ以外の者については之を禁ずることを以て公衆の保健衛生の向上に合致する所以であるとなした事は明らかであつて、斯る制限を設けることは公共の福祉を維持する為必要であると謂わなければならない。
従つて前記の諸規定は憲法第二十二条の職業選択の自由に対する制限であるが何等同条に違反するものとは謂い得ない、而してH・S式無熱高周波療法が医業類似行為に該当することは前認定の通りであるのでかかる療法を業とすることの制限を以て憲法第二十二条に違反するとなす主張は採用し得ない。
なお弁護人は被告人が本件行為をなしたのはH・S式無熱高周波療法は医業行為としては勿論医業類似行為としても取締の対象となるべきものでないと信じた為であり、被告人に医業類似行為を業とすることについての犯意を認め得ないと主張するが被告人が斯く信じた事を以て犯意なしとなし得ないことは刑法第三十八条第三項に照し明らかであるのでこの点に関する弁護人の主張も採用し得ない。
(適条)
あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法第十二条、第十四条第二号、罰金等臨時措置法第二条
刑法第十八条、第二十五条、刑事訴訟法第百八十一条。
(昭和二八年四月一六日平簡易裁判所)